日本でのDV被害者支援

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母子の問題は共通する女の問題

 私たちはこの現状を他人事として黙認するわけにはいきません。そこに当事者がいることと、私自身が一人で解決するというのではなくて、私たちの仲間とともに、一緒に共通理解し、確認しながら共に支えあって一人の母子の問題は私たちに共通する女の問題と捉え解決するためのお手伝いをさせていただいているのです。自分たちのシェルターの仲間、東京地域のブロックの仲間、それから各地の都道府県、北海道、東北、関東甲信越・・・そういう仲間たちがみんな集まってDV被害者を一人でも私たちがサポートして自立支援のお手伝いする、そうしながらここまでやってまいりました。それが私たちの目的と言うか、まっしぐらに来てしまった、という感じです。 

 そこに被害者がいる限り、一緒に支援する人たちとともに男女平等参画社会の実現のために微力ながらお手伝いできればと思っているのです。 

 ところで、シェルターは原則として利用は2 週間くらいと言われますが、この期間ではまったく無理なことです。次の民間アパートや婦人保護施設等に行ける状態は最短として約4週間(28 日間)はかかります。次の転宅先が見つからなくて、2、3 か月ご利用された方もおられました。私たちの運営しているシ ェルターはそういう役目をしているのです。

  私は多摩地域のシェルターをスタッフの方々と共に運営していますが、私たちスタッフもリスクを負います。以前、被害者から、シェルターに出入りしているのを加害パートナー見られたようだと言われ、急きょ、別の所に移っていただき、当時スタッフも一定の期間出入りを止め、2 か月たって、夜に引っ越したことがありました。 

 例えば「○区から何人来ています・・・」という情報は絶対出しません。どこからどういう方が入ったかという情報も絶対に出しません。被害者の個人情報は絶対に公表するはずがありません。お名前も「Aさん」、「Kさん」とぼかしております。それは当事者を守ることが必須だからです。加害者から追われ、子どもたちが連れ去られ、加害者から危害を加えられ、命をとられるということがありますので、その方の住所、名前は絶対に明かしません。 

 日本における民間シェルター活動の流れは、 1987年あたりから 2、3 か所の民間シェルタ ーが発足しはじめました。当時海外で既に活動されている方々からそのノウハウを聞きながら東京では「HELP」がいち早く発足されたかと。現在の「AWS」は「AKK」と称し発足し,「FTC シェルター」も早くに活動が始まっていたと聞き及んでいます。 

 被害者のための緊急一時保護と自立支援、DV防止法が施行されてから東京では配暴センターが開設され、民間シェルターも委託を受け、配暴センターからの入所もありますが、各市区町村の相談員さんからも依頼があり、そこに当事者がおられる限り緊急一時保護で受入れをしています。 

 多摩地域のシェルターは、必ず行政からの依頼でお受けしています。それは必ずと言っていいように、当事者のために社会資源を使うケースが多いので、行政機関との連携が必要になっているからです。 

 ストーカー被害の対応では、緊急が求められ、警察署から直でお受けする場合もあります。10 年前の警察のぶっきらぼうな対応とは異なり、生活安全課の対応がまったく変わってきております。

10 団体の連携で同行支援事業を実施

 次にアドボケイト、同行支援がありますが、私たち東京地域では、東京ウィメンズプラザの助成金制度を利用させてもらい、現在約 10団体の連携で同行支援事業を行っております。同行先は裁判所、警察署、弁護士事務所、法テラス、行政機関、シェルターから転宅先を探すための不動産屋、医療機関とか・・・。夫がどこに潜んでいるか分からない、そういう不安感と、精神的に長く重いものを持っている女性たちをサポートする意味で、当事者の要望に応え同行支援を行っているわけです。 

 関係機関とのネットワークにおいてはシェルターに来られた人をサポートさせていただくうえで、その方が何をサポートしてほしいのか、何を求めているのか、お話を十分お聞きしながらDV被害者が警察へ行かれる場合や、医療機関に行かれる場合などに同行をいたします。ひどい暴力で怪我をされ病院に行 ったり、こういう時には通報義務がありますので、DV被害者として取り扱われるのです。 

 それから外国籍の方の場合には、通訳、言葉のサポート、相談、保護、生活面として自治体、着の身着のままお金を持たずに何も持たずに出てきますので、区市町村から生活保護、生活面でのサポートが行われます。 

 法的支援は、当事者が将来のことをご自身で考えられ、最終的に夫と離婚を望まれる場合、その時には法テラス、弁護士事務所の協力を得て、裁判所の調停を申し込むなどをします。 

 問題は子どもたちです。DVの加害者が子どもの目の前で、暴力行為をする。その現場を見ただけで、精神的虐待が行われたとみなされ、児童相談所と警察署が連携し、必ず調査を行ないます。怪我をして警察に飛び込んだ親子、怪我をしている女性を見て、この行為を子どもの前で行なったと確認されると、その時点で児童相談所に通報が行きます。児童相談所が状況を把握しに来ます。そのときには女性は施設に保護されていて、怪我の治療をしたり、子どもは児童保護施設に入ったりすることになります。 

 最近こういうことがありました。シェルタ ーにお母さんと一緒に来られた子どもは、見た目は従順でとても良い子(6 歳男児)に見えましたが、三つ年下の 3 歳の弟に怪我をするほどの暴力をふるう様子が見られ――拳で顔面を強打したり、大人が見ていないところで柱に叩きつけたり――。実はこの子たちの父親はいつも子どもの面前で母親に身体的暴力を加えることが日常茶飯事だったとか。この方の場合は、数日して児童相談所から実態調査が入り、今後の対応にあたっては児童相談所がサポートをすることになってくれることが決定され一安心しました。が、このケースの場合は、父親が母親に対し殺されそうになるくらいの酷い暴力を振るった現場を見たということは、要するに子どもにとっては精神的虐待なのですよ、と説明してくれました。その時、どんなにか子どもは心の中に大きな傷を付けてしまったか、気になるのは、今後の子どもへのサポートのあり方です。精神的虐待を受けた子どものサポート。現場を見た子どもの精神的ケア、どんなサポートをしてくれているのだろう。その現場を見て、子どもにとっては大きな取返しのつかないような虐待を受けてしまった事実というのは、私たち大人が解決しなければならないことなのだとつくづく思い、今も心が痛い。そういう話がDV現場、シェルターにはあるのです。 

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