日本でのDV被害者支援

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自治体女性有志で DV 支援施設を開設

 また、1999 年、東京の西に位置する多摩地域自治体の男女共同参画の担当の女性たち有志数名は日中の公務の疲れが残っていたにもかかわらず、燃える思いで立川市男女共同参画センター「アイム」に夜ごと結集し、一民間人になってDV被害者とその同伴の子どもたちのための支援施設(シェルター)を作り、何しろ何とか助けなければ、今日一人助け、また明日一人助けなければを合言葉にお手伝いをするということで、民間の支援活動が始まりました。 

 シェルターを立ち上げるには、まずその施設が必要になり、民間アパートを借上げました。資金集めには多額のお金が必要になり、資金を融資のメンバーで捻出しようと話し合いましたが、それぞれ家庭を持ち、お金のかかる子どもを抱え、給料を手にできる立場とはいえ、女のお小遣いの額では到底及ばないことが分かり、勇気を出してこの件について公表して資金に協力してもらおうとY新聞社の記者にお願いし、新聞で訴えました。数日すると、某女性の方から電話が入りました。「私は身寄りもなく、数年前に夫を亡くし、現在は単身で暮らしています。今後のことを考え自身が生きるための最小限度の必要な金品以外のものを整理しております。先日社会福祉協議会に○○円提供させていただきました。 

 この度あなた方の活動されている新聞記事に目が留まり私は高齢なのでみな様のように身体を張ってのお手伝いは出来ませんが・・・とのことで、かなりの金額を提供させてください、との内容の電話を受けたのです。 
 私は即「ありがとうございます。頂戴します」・・・と言えませんでした。人様が大事にされているかなりの金額を私たちのこの活動のために寄付をしてくださることに正直戸惑い躊躇してしまいました。 

 「土方さん、あなた方はその思いを実現したいのでしょ。だったら私も応援者として加えてくださいよ。だからぜひ受け取って活用してください。このお金は私には必要ないのですから・・・」とおっしゃられました。 

 「待ってください。今夕、緊急のメンバー会議を開き、その多額のお金をいただいてよいのかみんなで話し合いさせてください」と、いま思えば失礼なことを言ってしまったと今更ながら反省しています。シェルター立上げにお金が必要なので、協力いただきたくY新聞紙上でお願いしたにもかかわらず、数日で実現が叶うことに内心戸惑いで困惑した自分がいたことに。 

 「いいですよ。メンバーのみな様に相談してみてください、そして良いお返事を待っていますからね。決まったら銀行からお振込みしますからね」とその女性は言ってくださいました。この世にやはり神様は居るのだと・・(その後その女性との交流等についての記載は省略しますが、ただ残念なことに今は他界されております)。 

 お陰様で、2000 年 3 月、額面 4,700,000円の高額をいただくことが実現したのです。 その甲斐あって現在の 2001 年 6 月に「シ ェルターA(仮称)」を、「シェルターB(仮称)」を2002 年 6 月に開設することが実現できました。こんな幸運なことは今後もうないでしょう。きっと多摩地域の女どもの熱い思いが届いたのでしょう。 

 その翌年、先に運営されている先輩の「シ ェルターC(仮称)」も加わり「多摩地域民間シ ェルター連絡会」が設立され、さらに中・長期DV被害者自立支援施設のステップハウスも立ち上げることができました。 

 こういった支援活動は私たちのみならず、全国各地の女性たちが草の根の運動・活動が始まり全国組織になり「全国女性シェルターネット」がボランティア活動として歩み始め、民間シェルターがいくつか開設され始めておりました。現在内閣府がカウントしているシェルターが 100 ほどあるようですが、そのうち全国女性シェルターネットの加盟シェルタ ーは 70 余団体が草の根の活動としてシェルター運営をおこなっております。
 今日は外国籍の方々の講座ですが、DV被害者支援――被害者が、何を求めて何をしてほしいか、それをサポートし、お手伝いをする――それが支援だとご理解していただけるとありがたいです。 

 また、DV被害者支援は日本ではどういうところで対応しているかというと、配暴センター、婦人保護施設、母子生活支援施設、福祉事務所、女性センター・男女共同参画センター(公的機関)、民間シェルター、また、今の警察はDV被害者支援相談をしてくれています。相談や警告など、特にストーカー支援はかなり密度をもって対応してくれます。それから子どものサポートシェルター、児童相談所、自立援助ホーム、児童養護施設、こういったところもDV被害者の相談を側面から支援してくれています。 

 配暴センターは東京都に 2 か所あります。婦人相談所と東京ウィメンズプラザ。この 2か所が配暴センターとして機能しております。全国で婦人相談所は 49 か所あると聞いています。47 都道府県ですが、ないところもあります。また市レベルで配暴センターを設置しているところが増えてきています。配暴センターはどんなことをしているかというと、相談、相談機関の紹介、カウンセリング、被害者及び同伴家族の一時保護、自立生活のための情報提供、保護命令制度の情報提供、民間シェルターの情報提供等々を行っていますが、配暴センターの中にも一時保護する施設はあります。被害者が緊急で来られた場合には一時保護をしています。ただ、年齢制限があり、中学、高校生の男子は受け入れしていません。他の方と同室の場合もあると聞いております。また入居者同士が会話をしてはいけない、加害者がどこで見張っているか分からないので安全を優先しなければならないために外に出ないなどの制限をしております。共同生活ができない、事情があって単身で一時保護をしなければならない方は、民間シェルターは委託契約をしていますので、婦人相談員を通して、民間の施設に入所されます。 

 女性相談センターの職員、施設の職員は有償、給料が出ますが、民間シェルターと公的な施設の違いは民間はボランティアで、私も多摩地域のシェルター運営に携わっており、室内の掃除、洗濯、利用者の受け入れ対応などいろいろなことをしています。すべて無償の支援員です。 

運営金の一部を多摩地区自治体から獲得

 とりわけ今年の夏は何度もシェルターに通いました。シェルター利用者からの相談、安全確認、部屋の掃除、退所後の部屋をいつでも利用可能にするための物品補充等々、スタ ッフは気の緩むときがありません。特に私の場合は年々歳を増し、日頃の体調を整えながらの対応、そのような中、自身の公的年金をシェルター運営に回し何とか活動をやっております。もっと若い方々に協力いただくには有償でなければ運営に携わってもらえません。 

 私たちが運営する多摩地域の民間シェルタ ーは 3 か所あります。シェルターはどこも運営委員会の組織を作って運営していますが、全員無給です。ただ、施設を運営するために賃貸のマンションをお借りしているのですが、その賃貸の資金は多摩地域の自治体から補助金をいただき、それを各シェルターに配分して、家賃だけは公費で出していただいております。施設運営の光熱水費や電話料、生活必需品等々の購入費用はスタッフ(支援員)からの拠出金で賄っております。スタッフはみなアルバイトをしてシェルター運営に協力しています。 

 同シェルターには年間約 10 組くらいの方が利用されますが、入所される方々は過酷な、すさまじい事情があり、自分の家を出るにはかなりの覚悟をもって、何度も挫折しながらも、自分のため子どものためにと、何とか乗り越えて生きようとして緊急一時避難所のシ ェルターまでたどり着きます。しかし、これでやれやれではありません。これからが自立に向けての始まりなのです。 

 学校を卒業し、始めは胸張って社会に一歩出たけれども、恋愛し結婚して素敵な結婚生活を夢見たでしょうけれども、日本の社会で、 9 割以上の男性は固定観念が強く、男は、女はこうあるべきという社会の中に生き、女は我慢、過酷なものを背負って、事あるごとに我慢が当たり前で生きなければならない。社会もだいぶ変わったとはいいながらも、この固定観念の強さが残る過酷な社会に生き延びて、気が付いてみると、子どもができていた。私さえ我慢すれば、いつかは分かってくれるだろう。それで努力して何年かたって気が付くと暴力もますます厳しくなり、子どもの前でも平気で妻の悪口を言ったり、暴力を振る ったり、挙句の果ては殺されそうなほどの暴力を受けて、やむなく逃げだしたという方がたくさんいらっしゃいます。 

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